【Interview】Rakuten Fashion Week Tokyo
藤崎 尚大 Naohiro Fujisaki meanswhile (ミーンズワイル)
TOKYO FASHION AWARD 2020受賞デザイナー
服飾大学卒業後、アパレルメーカーにて経験を積み、2014AW シーズンより独立。
「日常着である以上、服は衣装ではなく道具である」をコンセプトに “meanswhile” を始動。ファッションの持つ表面的で無稽な部分に、道具としての機能を追求したプロダクトを展開する。
2016 新人デザイナーファッション大賞プロ部門において最高位の賞を受 賞。2019年にはTOKYO FASHION AWARD 2020を受賞。
国内は元よりニューヨーク、パリ、香港などの多数のメディアに掲載されるなど今後活躍が期待されるブランドとして注目を集めている。
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洋服が持つ機能にフォーカスし、アウトドア、ミリタリー、ワークウエアなどの要素をベースにした現代の日常着を提案するmeanswhile。2014年にデザイナーの藤崎尚大氏によって設立された同ブランドは、2015年より海外の合同展に参加し、2016年には新人デザイナーファッション大賞プロ部門を受賞するなど、早くから国内外で注目を集めてきた。今年10月には、TOKYO FASHION AWARD 2020の受賞デザイナーとして、Rakuten Fashion Week TOKYO 2021 S/Sにて大掛かりなランウェイショーを披露するなど、着実に歩みを進めている藤崎氏を取材した。
ファッションデザイナーを志したのはいつ頃からですか?
父親が美術の教師をしていた影響もあり、将来は何かしらものをつくる仕事につきたいとずっと思ってきました。ただ、父親と同じ道には進みたくないという反抗心のようなものがあり、高校卒業のタイミングで以前から興味があったファッションの道を選び、大学で服飾を学びました。卒業後はアパレルメーカーで働くようになったのですが、並行して自分が欲しいと思う洋服をつくり始め、それがしっかりとしたものになった時に半ば勢いでブランドを立ち上げました。
「日常着である以上、服は衣装ではなく道具である」というブランドコンセプトについて詳しく聞かせてください。
もともと僕はアウトドアやスポーツウエアが好きで、洋服の機能面に興味がありました。洋服には、日常の道具としての側面と、衣装としての側面がそれぞれあります。自分が身を置くファッションの世界はこれまで、ヨーロッパを中心にした業界のシステムが流行を生み出し、さも洋服に賞味期限があるかのように、常に新しいものを手に入れることを促してきました。その弊害として、いまファッション業界は大きな壁にぶつかっています。だからこそ、洋服の衣装としての側面をあえて排除し、道具として提案をしていきたいと考えています。
業界の現状に対するアンチテーゼが多分に含まれているのですね。
ファッションという言葉に軽薄なイメージを抱く人たちは少なくないと感じていて、それは業界に関わる人たちが長い時間をかけてつくってきたイメージだと思っています。ファッション業界は、先シーズンまでカッコ良いとされていたものが、次のシーズンにいきなりダサいと言われてしまうような世界。アパレルが斜陽産業だと言われる昨今、そのようなことを続けていては新しい人たちが入ってきにくいはずですし、状況をなんとか変えていきたいという思いがあります。
服づくりのインスピレーションはどんなところから得ているのですか?
身の回りのあらゆる物事がインスピレーションソースになりますが、特に多いのは自然のものです。あらゆる自然物は、なるべくしてその形になっています。なぜそのような形になったのかということを自分なりに考察していくことで色々な発見があるし、自然の観察を通じて機能が持つ理由について考える癖がついたように思います。
洋服が持つ構造や機能を分解、再構築していくようなブランドのクリエーションは、そのような思考から生まれているのですね。
特にメンズファッションには、昔からつくられてきたものを現代に合わせてリプロダクトしていく側面が強いですが、生活様式や移動手段が大きく変わっている現代において、ポケットなどの形が100年前とまったく同じというのはおかしいと思うんです。その時代の生活様式や考え方など人間のスタイルや内面が現れたものがファッションだと思っているので、そうした部分を常に意識しながら、新しいものを探っていきたいと考えています。
10月に開催されたブランド初のランウェイショーについても聞かせてください。
当初3月に予定されていたショーが新型コロナの影響で取りやめとなり、10月に改めて開催されることになったという経緯があったので、中止になった秋冬シーズンのコレクションも織り交ぜることにし、2シーズン分のショーをまとめて行うような意識で臨みました。規模感もそれなりのものにしたいという思いがあったため、会場に工事現場をイメージした鉄骨の櫓を組むなど大掛かりなセットをつくり、モデルも50人以上起用しました。ブランド初のランウェイショーだったので、自己紹介という意味でも多くの人に見てほしいという思いがありましたが、一方でソーシャルディスタンスを確保しなければならなかったので、上下段の2層に分けたランウェイをモデルが行き交い、それを櫓の外から見て頂くという演出で折り合いをつけました。
コロナ禍によって人々の生活様式や価値観が変わりつつある中、これからのファッションはどうなっていくとお考えですか?
もし仮に一切外出ができないような世界が訪れたとしたら、洋服のあり方も変わるかもしれませんが、現時点では判断が難しいところですね。僕個人の話をすると、自粛生活が強いられた時期に、新しいものを生み出すことに果たしてどれだけの意味があるのかと凄く悩みました。そしてその結果、自分がこれまでに取り組んできたことや、これからやろうと考えていたことは間違っていなかったと思えたので、これからも洋服の機能にフォーカスし、同様のコンセプトで服づくりを続けていきたいと考えています。
先日、ブランド初の直営店もオープンしましたが、今後の目標などはありますか?
ブランドを立ち上げる時に、7年くらい先までの大まかな事業計画を立てたのですが、ちょうどいまが7年経ったタイミングなんです。そんな折に生活が激変してしまったこともあり、あまり先のことは考え過ぎないようにしようと思っています。どちらにしろ、もともと自分が目指していたのは、このくらいの売上を達成するとか、いつまでにパリコレに出るといったことではなく、ブランドの哲学を通してお客様の考え方に影響を与えていくこと。それを実現するために、地道に活動を続けていければと考えています。
Interview by Yuki Harada
Photography by Yohey Goto