「ブランドの成り立ちとバックパック。」
普段自身の言葉として発信する事はあまり多くないのですが、これからはものづくりに対しての思いや、デザイン哲学等、ブランドの背景となる部分をもっと知ってもらいたいと思い、少しずつ発信していけたらという思いで筆を取りました。
はじめての投稿としてこのバックパックを選んだのには理由があります。
まだ僕が会社員だった頃、日常からアウトドアアクティビティ、旅行まで一気通貫で使用できるバックパックが世の中にあまり無い事に不満がありました。
自身のブランドを作るなんて頭にも無い頃に、この不満を解消するためにバックパックを自作しようと構想しはじめました。
アウトドアとバッグ
その当時(今から15年程前)、特にアウトドア界隈ではアクティビティや目的に対して、この日程なら40L、こういう時は25Lといった具合で複数のバッグを所持する事が当たり前でした。
アウトドア界隈の、目的に対して最適な装備を揃える感覚は当時の自分にも刺さる価値観で、そこが楽しみの一つでもありました。
ただそれが最適解なのは理解していても、お金の無い当時は現状をアイデアで乗り切る事が当たり前でした。
一つのバックパックをベースに、荷物が収まりきらなければバックパックに他のバッグを縛り付けたり、外付けする事でなんとか背負える状態にして、いろいろなところを旅しました。
少しずつこうした方が便利だな、こうやった方が効率が良いと自分のスタイルが確率されていく感覚があり、使い方や目的が明確になっていったのを覚えています。
ARC’TERYXのアロー22
その時の僕は、日常も含めメインで使っていたバックパックはARC’TERYX(アークテリクス)のアロー22でした。
今でも定番のデイパックとして高い人気があります。
このバッグのある構造が“Outside”を構想するきっかけとなりました。
アロー22の下部はバッグ自体が自立しない程に底面がカットされています。
これには理由があり、登山をする時(特に登りの場面)に荷物の重心が後ろ側に引っ張られない様にするためです。
この機能が必要ないのであれば、デッドスペースが生まれている事になります。
そのスペースに別のブランドのウエストバッグを縛り付け、必要な時は容量を拡張して使用していました。
この形を最適化しようとデザインしたのが“Outside”です。
足し算と引き算
特にデザインに関わる人にとっては、足し算のデザイン、引き算のデザインという言葉は当たり前に聞く言葉だと思います。
デザイン以外でも、考え方自体にもこの足し算、引き算という概念があると考えています。
このバッグについてもそうで、バックパックに荷物を外付けしていくという行為自体については足し算と捉える方が多いと思います。
ただ僕にとってはこの一連の考え方は引き算に通じるものだと思っています。
一つの気に入ったバックパックが多様な場面に対応できる事、他のバッグを買い揃えなくて良い事、俯瞰した視点で見るとこれは引き算だと捉えています。
この様に、プロダクト単体で見るのではなく、ライフスタイルや価値観、その人の生き方みたいなところと照らし合わせて、プロダクトデザインが合致する事が、作り手冥利につきるところです。
最初に書いたはじめての記事にこのバッグを選んだ理由ですが、このバッグの完成品を見た時に、これはブランドとして通用するものだと自信を持てた事がきっかけで、ブランドを立ち上げる事に繋がった思い出のプロダクトだからです。
このバックパックの構想から完成までに3年掛かりました。
何度も型紙を作り直し、微調整を重ね、背負心地や細部のパーツまでこだわって形にしています。
特に型紙に関しては他のバッグブランドと大きく違う部分です。
通常バッグについては、バッグ専門の型紙を作る職人がいます。
熟練の職人は仕事の精度も高く、より良い型紙を作れる一方、「バッグとはこういうもの」という固定概念も多くあります。
そこがネックとなりフォルムの形成や見たことの無い機能を実装することが難しい場面が多くありました。
meanswhileではバッグの型紙も洋服のパタンナーに依頼しています。
実用性の部分とファッションとしてのフォルムの美しさを両立するために、時間は多くかかるけれどより良いものを作る方法を選んだ結果です。
また縫製工場についても難航しました。
構造が複雑で、縫製工程を理解できない職人さんに何度も説明をしにいきました。
作れる人が限られることで生産数も安定せず、度々納期遅れで取引先の方に迷惑をかけたこともあります。
そんな中、ある工場さんとの出会いがあり、現在はその工場さんにmeanswhileのすべてのバッグ類を依頼しています。
アウトドアザックをメインに、自衛隊に納入するバッグも製造している信頼のおける工場さんです。
技術の高さもそうですが、バッグというものの構造も教えてもらい、自身のレベルアップにも繋がったと思っています。
その後、自身で数年使用していく中でアップデートしたい部分が増えていき、修正するために販売を中止していました。
工場さんの協力もあり、また3年掛かりましたが、再度納得のいくものが完成したので24SSシーズンからマイナーアップデートという形で再販する事ができました。
嬉しい事に3年も間が空いてしまったにも関わらず、待っていてくれた方が多くいて、すぐに販売予定数は売り切れてしまいました。
待っていてくれた方からの喜びの声が聞けた事はとても良い刺激になりました。
急遽追加生産をかけた分が、少量ではありますが入荷します。
今回は商品の背景を伝えるつもりだったので、商品説明については書きません。
使い方やディティールまで言及すると、かなり長い文章になってしまいそうなので、また別の機会に書かせていただこうと思います。
少しでも興味を持っていただけたら、商品ページも見ていただけると嬉しいです。
ULTRAWEAVE™ “OUTSIDE”
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