【INTERVIEW】SOLOTEX
藤崎尚大がミリタリーウェアを再解釈。meanswhileの新作に採用された、ソロテックス使用したハイブリッドな素材「デルタSLX」とは。
「日常着である以上、服は衣装ではなく道具である」というコンセプトを掲げて、「身体に最も近い道具」としての洋服を追求し続けている、meanswhile。
2019年にはTOKYO FASHION AWARD 2020を受賞し、世界からも注目をされている気鋭のブランドだ。
これまでのシーズンでも多様な「ソロテックス」を採用してきたmeanswhileが、2022年のSSシーズンで採用したのはハイブリッドな素材「デルタSLX」。
機能性を追求しつづける同ブランドが「デルタSLX」に見出した魅力はどのようなものなのか。デザイナーの藤崎尚大に、話を聞いた。
meanswhileのブランドコンセプトについてお教えください。
飾りのようなディティールは排除しながら、機能性に特化した洋服を作ることをコンセプトとしたブランドが、meanswhileです。2014年の秋冬にスタートしたので、今年で8年目ですね。
洋服を作る際には、使用シーンや用途を決めてから作る事が多いのでしょうか?
最初に「その洋服がなんのためのものか」という目的を決めて、そこに向かうための道筋を決めていく事は多いです。ただ、たとえば「山を登るための服」というように決め込んで作るのではなく、そこから少し用途を広げてデザインすることのほうが多いですね。あくまで「日常着」なので。
meanswhileとして、どのような素材を選ぶことが多いのでしょうか?
機能性を重視しているので、合成繊維を選ぶことは多いです。ただ、天然ものの良さもあるので、バリエーションとして毎シーズン天然素材も意識しながら素材選びを行っています。
天然繊維のようなルックスの化繊を使うこともありますし、織りや編み方を工夫することで天然繊維に機能性をもたせることもできる。どちらかだけというのではなく、常に天然繊維/合成繊維の両軸で考えるようにしています。
そうすることで素材からインスピレーションが湧いて「こんなアイテムを作ろう」と思うこともありますね。
「ソロテックス」を採用し始めたきっかけは、どのようなものだったのでしょうか?
最初は「オクタ」という軽量で吸汗速乾性が高く、遮熱機能を持つ生地に惹かれて、帝人フロンティアに興味を持ったんです。そこから「ソロテックス」のことも知って、2年ほど前から素材として使わせてもらうようになって。
その中でも特に評判が良かったのは、天然素材のようなルックスの「ソロテックス サイネックス」で作ったコートとパンツですね。高密度に織り上げられた張りのあるマットな質感で、仕立てると高級感のある独特のフォルムに仕上がるんです。しかもしっかりとしたシルエットでありながら、動きの制限を邪魔せず、快適に着用することができる。それまで実はmeanswhileはパンツが弱いブランドだったのですが、それ以降パンツも注目されるようになりました。
今回紹介頂く、2021年春夏のコレクションをデザインするにあたって、コンセプトや意識したことなどはありますか?
デザインする上での基礎的なことを表現した言葉で「Form follows function」、つまり「形は機能に従う」という言葉があるんですけど、ファッション業界においてその考え方を実践している人はあまりいないと思っていて。だからこそ、meanswhileはブランド立ち上げからそれを一つの命題としてきたんです。
ただ、それと真逆な、「Function follows form」という、元々ある形のものに機能性を見い出す、という考え方もあるなと思ったりもしていて。たとえば落ちている石を例に取ると、尖った石を拾ってナイフに使うとか、重量感のある石であればハンマーとして使う、というようなこともあると思うんです。
そもそも道具が生まれた起源はそういう形だったと思うので、「Function follows form」と「Form follows function」双方を対比しながら考えて「道具としての洋服」に落としこむことを今季は意識しましたね。
ファッションとしてのデザインの仕方とか、道具の成り立ちとか、いろんな事柄を対比しながら考えて作られたコレクションと言えると思います。
そんな2022年SSシーズンのアイテムから、今回紹介していただくのはこのワッフル編みの「デルタSLX」を採用したフライトジャケット。
ロイヤルエアフォースという、イギリス空軍のフライトジャケットをベースとしているのですが、その一番の特徴である襟もとのディテールや機能性を、もともとのジャケットとは違う機能として表現しています。
「BEAUFORT FLIGHT JKT」
具体的に言うと、襟もとのディテールは酸素マスクのホースを収める為のものなのですが、そこにフードを収納すると同時に襟を立てて独特のシルエットを作ることができるようにしています。つまり、別の機能を持たせると同時にファッション的なアプローチも行っているということです。
袖などに使われているワッフルの部分が「デルタSLX」ですね。「ソロテックス」に「デルタ」の機能が付加されており、形態安定性やストレッチ性などの特徴に加えて、引っかかりにくく、防透性やUVカット性という特徴も兼ね備えている、ハイブリッドな素材です。なぜ、この素材を選ばれたのですか?
原型となったフライトジャケットでは袖はメッシュとなっているのですが、その部分は他の素材に置き換えたいな、と思っていたところで、このワッフル織りの「デルタSLX」と出会って。このワッフルなら現代的なハマり方をしてくれるな、と思って採用しました。
テープ部分は元来メッシュの伸び防止に施されているものだと思うのですが、ワッフル素材ともうまくマッチしていると思います。サンプルが上がってきた際には、素材とデザインの当て込みがうまくいったな、という手応えを感じましたね。大きめのシルエットなので、細身のボトムスと合わせてもらうときれいにコーディネートできると思いますね。
そして同じワッフル編みの「デルタSLX」で作られたセットアップも。
ワンマイルウェアのイメージで作られたセットアップなので、身幅を大きめにしてリラックスした雰囲気を出しました。
スイムウェアから発想して、裾には別素材でサポーターのようなディテールを施しています。1枚で着るのはもちろん、肌寒い時期にはロンTやタイツなどを下に合わせて、レイヤードを楽しんでもらうのもいいのではないかと思いますね。
このワッフル編みの「デルタSLX」を使ってみて、いかがでしたか?
キックバックに優れているのに加えて、綿素材のワッフルよりも耐久性もありそうな所がいいですね。肌に触れる素材としても、アウターの素材としても使える優れた素材なのではと思います。
これまでさまざまな「ソロテックス」を採用してきたと思うのですが、このような機能が付加されていればいいな、と思うようなことがあればお教えください。
プライベートでキャンプに行くことがあるのですが、アウトドアのフィールドでは外側に着るのは防水の服が基本。ただ、防水の服は化繊であることが多いので、焚き火をしたときなど火の粉が飛ぶと穴が空きやすい。難燃性と防水という機能を兼ね備えた繊維があればいいな、とよく考えたりしますね。
それとは別で、天然繊維のようなルックスの化繊というのは世の中に出てきているとは思うんですけど、ファッション好きが好みそうな粗野な感じというか、触り心地やテクスチャー感がもう少し表情があるものがあればな、と思っています
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