【INTERVIEW】within
--- 「日常着である以上、服は衣装ではなく道具である」というコンセプトで服の衣装としての側面を排除して機能面に集中していますが、服の一番大事なところは機能性ですか?
また、これはサステナブルな考え方でしょうか?
藤崎 : 洋服の本来の成り立ちから考えると、最初は機能面を重視した理由から生まれたものでした。
寒さや外敵から見を守るためのものだったと思います。
そこから、例えば民族などは自分たちのコミュニティーをより強固にするために衣装の側面を取り入れた衣服を発明していきました。ただしそれも“機能性”の一つだったと考えています。
民族間の地位を表したり、他の民族との差別化など、いろいろな理由があったと思います。
現在の衣服はファッションビジネスのサイクルの中に取り込まれたものとなってしまいました。本来は長く着られる洋服も、半年〜1年もすれば古いものと捉えられてしまいます。そうやって新しいものを買ってもらうことでこの業界は成長してきました。そのビジネス手法は洋服の衣装の側面を強調したものだったと思います。ただそこに限界がきています。
meanswhileはこの状況に新しい価値観を提案するために生まれました。
機能だけを重視したい訳でもなく、便利なものを作りたい訳でもありません。
デザイン哲学と理念、考え方を理解してもらうためにこのコンセプトを掲げています。
この考え方自体がサステナブルにつながるものだと確信しています。
--- あなたの目から見て、衣服の機能性を定義するものは何ですか?
素材そのものだけではないことは分かっていますが...。
藤崎 : 服の機能性について考えるには、まずはそのモノの目的を知る必要があります。
山に登るための服であれば、雨が降っても大丈夫な防水性だったり、軽量で持ち運びやすい事、バックパックを背負ったままでも蒸れを放出できる形状のベンチレーション等、目的に対して必要な機能が見えてきます。
機能を定義するのはこの“目的”です。
--- ブランド名に「デザインは目的ではなく手段」というあなた自身の哲学が入っていると思いますが、そのあたりを説明してもらえますか?
藤崎 : 先程の質問の答えと重複してしまうのですが、洋服を作る時に大事にしている事はまず目的を設定するということです。
その目的に対して形や機能性の取捨選択をしていきます。この行為がデザインと言われるものです。
ただかっこいいものを作ろうとすると、ここにテープをつけたらかっこいいなとか、ここにファスナーがあるとかっこいいという様な理由でデザインしていきます。
それはデザインする事が目的になってしまっているからです。
meanswhileではこういう作り方をしないために、ブランドネームに哲学を刻んでいます。
--- ルックブックの背景として、あるいはあなたがおっしゃるインスピレーションとして、自然はmeanwhileにとって重要な存在です。
自然の中にあるものの存在や機能は、meanwhileのデザインにどのように影響しているのでしょうか?
藤崎 : 自然には様々なインスピレーションをもらいます。
植物や石、昆虫や動物等、その全てが様々な理由があって形を成しています。
その理由を考察すること自体が、meanswhileのデザイン活動に一番影響を与えていると思います。
--- 現在、多くのアウトドアブランドが機能的すぎて日常にふさわしくない商品を作っています。
機能と実際に必要なものの関係についてどう思いますか?
藤崎 : これはとても難しい質問です。
例えば、開発された都市ではなく、まったくの自然で過ごす事を考えると、今アウトドアブランドが作っている商品の機能が過剰ではないと気付くかもしれません。
自然に対して人間はとても小さく、自然に対して絶対安心な状況はなかなかありません。
ただ都市で着るための服であればオーバースペックな服は沢山あります。服だけで機能を満たさなくても、都市や建物が機能を満たしてくれているからです。
僕の個人的な話で言えば、いつも急に旅に出たくなる事があります。そう思った時にいつでも行ける様に少し過剰な装備を日常的に持っています。
洋服も同じで、アウトドアと都市をシームレスに繋ぐためには、多少オーバースペックでも良いのかもしれません。そのためには、“デザイン”と“機能”が両立していると良いですね。
しっかりと考えられた機能はその人の日常を拡張してくれます。
--- meanswhileのデザインは、アウトドアの要素を強調しすぎず、機能とファッションの絶妙なバランスを見出しています。
このバランスはどのように実現されているのでしょうか?
藤崎 : このバランスを取る事はとても大切にしています。
図で説明しないと分かりづらいですが、まず服を作る時にその服の目的を設定します。
目的に対して、無数の道があり、この道を選ぶ事がデザインです。
その目的に真っ直ぐに進むとアウトドアブランドのデザインと似通ったものになります。
少し別の道を選ぶ事で機能とファッションのバランスを取っています。
--- 2022年、meanswhileは初のスニーカー「NEUTRAL RUNNER」を公開しました。
靴のデザインと洋服のデザインの違いは何ですか?
今後も靴の展開をしていく予定ですか?
藤崎 : やはり靴と洋服のデザインは違います。
実際に地面と接する事、その際に全ての体重を受け止める場所になる事等、強度が必要になったり、そのための縫製方法や材料も違います。
服を作る上では考えない部分も多いです。
ただmeanswhileのデザイン哲学自体は何を作る上でも変わりません。
今まで靴はコラボレーションでしか作ってこなかったのですが、チームメンバーに靴のデザイナーが加わった事で実現できました。
今後も展開していく予定ですが、どの程度の頻度になるかはまだ未定です。
--- コロナウイルスの流行によって人々の服装が変化し、多くの人が服の本質に注目し始めました。
meanswhileのような機能的なブランドは、今後トレンドになると思いますか?
藤崎 : 今回のコロナウィルスの件は、世界の全ての人々が同時に経験した事で、世界中の人が洋服に対しても同じ様に本質を考える様になりました。
この事からもトレンドになる可能性も十分にあると思います。
ただし、本質をトレンドとして消化してしまうのは問題だと思っています。
トレンドになる事で沢山の人に広まり、その考え方が一部の人だけでも定着していく事が大事だと思っています。
--- meanswhileでは、ルックブックのほかに、シーズンごとにコンセプトフィルムも制作しています。
コンセプトフィルムでは、一般的にどのようにアイデアを得て、テーマを設定しているのでしょうか。
藤崎 : ルックブックやムービーについてはここ数年同じチームメンバーと作り続けています。
ムービーについてもそれぞれがアイデアを出し合う事が多いです。
スタイリストの服部昌孝が中心となり、テーマに沿って監督を選定し、場所や撮影方法等を決めていきます。
視聴者に対しては、直接的に文字や文章で伝える時もあれば、動画のストーリーで伝えたり、コンセプチュアルな映像で間接的に伝える事もあります。
--- meanswhileはナイキ、ダナー、マスターピースなど多くのブランドとコラボしてきました。
コラボが盛んな市場の中、本質的なコラボレーションの意義をどう定義していますか?
コラボ相手に選定する時に何を大事にしていますか?
藤崎 : 色々なブランドとコラボレーションしてきましたが、その全てが良い形で表現できたと思っています。
お互いに確かなブランドコンセプトを持っていれば、双方の持つ特徴を活かした新しい価値観を提供する事ができると思います。
コラボレーションする相手に求めることは、しっかりとコンセプトを持っている事です。--- 最後の質問です。
meanswhileは洋服や形ある製品だけでなく、コンセプトやフィロソフィー、価値観を含むあらゆるmeanswhileの世界観を確立しています。
創業社としてこの世界観をどの様に表現していますか?
藤崎 : ブランドとして商品を作ることはもちろん大事な事ですが、meanswhileが一番伝えたい事はブランドの哲学、理念です。そこに共感してくれたお客さんがmeanswhileの製品を選んでくれていると認識しています。
お店の空間を作る時や展示会の什器の選定等、あらゆることをブランド哲学に沿って決定しています。
この哲学や理念を伝える事が最大の目的なので、洋服はもちろんの事、それ以外のmeanswhileを形成するもの全てに世界観が生まれると考えています。